先日、長野県諏訪湖のほとりで東京2020オリンピック聖火リレーを視察しました。ランナーが来る2時間ほど前。きっちりと並べられたコーンとバー。これなら迷うことなく観覧エリアとリレーのコースだってことがわかります。イベントを準備する側としては、人がどう動くか予測して、このようなモノの配置や人の配置を事前に考えます。人の行動心理を考えることは、イベントの運営計画には不可欠です。
しかし、ヘッドライトを早めにつけるという、簡単な行動が、なかなか広まっていかない。
オートライト義務化が進んでいますが、すべてのクルマがオートライトになるには20年かかるといわれています。となると、ドライバーの行動を変えていくことが必要です。
でも、どうやれば、ドライバーの行動を変えていくことができるのか、試行錯誤の連続です。
https://www.omoiyari-light.com/
少し前に「ナッジ」という言葉を知りました。Green Nudge Yokohama代表の植竹香織さんとの出会いがきっかけです。植竹さんは、元横浜市職員でナッジの政策活用に関わっていた方。横浜市行動デザインチーム(YBiT)に所属していました。
https://ybit.jp/
ちょうど、ナッジに関する勉強会「グリーンナッジ勉強会」があるとお聞きし、さっそく、参加してみました。環境に優しい行動の促進を目的としたナッジを「グリーンナッジ」と呼ぶそうです。
勉強会では、「ナッジ」についての解説とともに、国連環境計画(UNEP)https://www.unep.org/
による大学のキャンパスを対象としたエコアクション促進プログラム「The Little Book of Green Nudges」の中から環境配慮行動を促進する4つの原則(EAST)について解説をしていただきました。
EASTとは「Easy」(簡単にできるようにする)、「Attractive」(目を引くようにする)、「Social」(社会の中での位置づけを示す)、「Timely」(時間やタイミングを意識する)の頭文字4つを集めたもの。例えば「Easy」の場合、初期設定(デフォルト)を変えることにより、簡単に行動できるようになるというものです。
今、フットシールがあると、間隔開けて並ぶとか、当たり前にやっていますよね。これは、「Attractive」の好事例ですね。
私が気に入っているのは1枚目で紹介した「おもわず消しちゃうスイッチ」です。これも「Attractive」ですかね。
勉強会では、宇都宮大学の糸井川高穂先生も登場し、事例を紹介していただきました。先生の取り組みでは、横浜市立小学校での取り組みがあり、こどもたちも、この「おもわず消しちゃうスイッチ」的なことを実際に自分たちでつくっているのがいいです。
日本のナッジ実践事例②:横浜市立小学校の省エネビジュアルナッジ(糸井川高穂先生)
最初の聖火の話は、初期設定が違っていたら、例えば、コーンとバーがなくて、看板だけだったりすると、よくわからず混乱を招くことになったと思います。おもいやりライトに関しては、これまで「A」「S」「T」を意識したアプローチを重ねていましたが、ひょっとしたら、「E」が大事なのかもしれないと感じています。改めて「ナッジ理論」を意識して、行動変容を自然に促せたら。それは、私たちがイベントを運営する中の基本中の基本だなと思いました。
(文:森由香)
ナッジとは、行動科学や社会科学の知見を活用し、規制や補助金などに大きく頼ることなく、自らより良い選択をしたくなるようサポートする手法(ナッジとは|Green Nudge Yokohama 勉強会資料より)
https://www.facebook.com/greennudgeykhm/