コラムColumn

2021.01.28

気になる本「こっそり ごっそり まちをかえよう。」

三浦丈典さんの書籍、こっそり ごっそり まちをかえよう。の表紙
こっそり ごっそり まちをかえよう。
ルーデンススタッフがいいなと感じるもの・ことを紹介するコラム第2回。今回はまちづくりをやる!と構える前に読みたい書籍「こっそり ごっそり まちをかえよう。」です。
うちには子どもがおり、家中の棚からありとあらゆるものを引きずりおろしてきます。
なので
「(この写真を撮った)ロンドンで、こんな緑豊かな公園が多い風景を日本に作るって決めたな」
「(ああ、この本を買った)時は目の前の業務に悩んでいたな」
と記憶も一緒に運ばれて来、面白くもあります。
さて、その子どもの最近の戦利品に書籍「こっそり ごっそり まちをかえよう。」があります。
こっそりと想像しはじめたら、ごっそりとものの捉え方がひろがるコラム本です。
作者は建築家の三浦丈典さん。
暮らしの拠点である東京で、東日本大震災を機に「どこまで行っても逃れられない、どんなにお金があっても打ち勝つことのできない死」を意識したことや
“最初から与えられたものだと思っていたこの世界のルールが、実はとても胡散臭くて(中略)
むしろ自分の好みや直感、本能のようなものを信じたほうがよさそうだ、言葉にならない自分のささやかな感覚と、この広い世界の成り立ちは地続きだ”
と思い始めて立てた、43個の作戦が書かれています。
2021年現在と状況は少し異なりますが、まだ収束の見えない新しい感染症の流行によって世界中の生活が変わった今、この本を手に取ったことで気持ちが少し落ち着きました。
本にある作戦のひとつをご紹介します。
「1日何本の木を見たか、かぞえながら生活してみよう。」
というもの。
大都市で比較する、人口ひとりあたりの公園面積は
パリ 11.8㎡
ニューヨーク 29.3㎡
東京 6.79㎡
と、数値でいうと低い印象です。が、外国から来た人は日本の町の緑の多さに驚くといいます。
それは、神社やお寺、路地に置かれた植木鉢など、細やかな緑の多さによるもの。東京にはニューヨークのセントラルパークのような大きな緑地帯はありませんが、文字通りそこかしこに生きる雑草や植栽が手をかけなくても育つ、湿気などの気候によるものもあります。
三浦さんはそれを
“目や耳をよく開いて、注意深く観察すればするほど、際限のない奥行きに引き込まれるような艶やかさで、素朴で力強い生命力が、まるでオーケストラのようにたがいを引き立て合いながら共存している。”
と評しています。
我々の住む首都圏は2021年1月、2度目の緊急事態宣言が出され、外出に制限がかかっています。
一面に広がる花畑や各地の景勝地、私の好きなロンドンの街並みの絶対的風景などに出かける日々はもう少し後になりそうです。
近所の散歩が続いていますが、駅に辿りつくまで砂漠、、でもないですね。家々の庭木の緑を眺めて過ごす時間、と切り替えたら、冬の景色のなかでも様々な発見があります。
そんな小さな感動で日々を紡いでいくことがやっとの毎日ですが、
(私でいうところの)ロンドンに行かなくても観察したら見えてくる。
他の街に憧れ、目の前の景色や状況に絶望しなくても、人の営みの中ですでにできている美しさに目を向けること。
少し、俯瞰すると楽だ。
そして、公園が欲しいなら自分もベランダに何か植えたらいいんじゃ?
と思うようになりました。
リモートワークで通勤時間の余裕がまたできたところで、発想の切り替えが必要になってくる時期でもあります。
そんな時にぜひこっそり、でもなく書籍にあたる時間を!
(文:真栄城舞)

SHARE

  • x
  • ルーデンス株式会社 Instagram
  • Facebook
もどる
PAGE TOP