真栄城:年末年始は本を読んだり、家族との時間の合間に思索をされてたりしていたとのこと。
まずは何を読まれていたのですか?
石渡:「サピエンス全史」や「21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考」(著者:ユヴァル・ノア・ハラリ)などをチェックして読んだりしていました。
人類の基本的なあり方として「謙虚である」というキーワードが出てきて、とても大切だと思ったよ。
何事にもきちんと、おごらずにあること。
真栄城:おお、謙虚とは意外な言葉でした。それはかねてから石渡さんが語ってきた、ホモ=ルーデンスが「遊ぶ」性質と結びつきますか?
石渡:難しいとは思うけど両立はすると思うよ。遊びがないと文化は生まれてこないから。
森:謙虚というのは、正面から向き合うってことかな。本質を見つめる、ならつながるね。
石渡:そう。それからすごく考えていたこととしては、我々がつくってきたイベントの価値は何だったのかということ。
イベントの価値ってなんだと思う?
真栄城:その場で得られ、持って帰る感動やその重さ。
石渡:そうだね・・・そしてその「体験」。エクスペリエンス・マーケティングとか20年くらい言い続けているんだけど、何なんだろうな?と。イベントは体験だ!というのもコモディティ化してきていて、本質を改めて考えたいと思っていたところ。
森:いまメディアで目の敵にされてしまう「イベント」だけど、本来は伝えたいことがあって開催するもの。大勢の人間を集めるだけが、イベントではないよね。
石渡:イベントのみならず。旅をしたり、食事をしたり・・・
ある音楽を聴いて「え?」って今までにない感覚にさらわれていくような、そんな偶然の出会いが、人を作るんだと思ってる。
そこで得た感覚がまた別の体験や知見と積み重なって、いつか自分の表現として現れてくる。
単なる体験というよりも、偶然性が僕らのビジネスの価値ではないか?と思い始めている。
今回の駅伝もね。
真栄城:13年ぶりの。
石渡:まさかの! 10区で!
きっとあれも練習の積み重ねだよね。そんなハラハラドキドキは、体験だと思う。
人間の文化はいろんなことを研究し、出会い、考え、いつかそれが重なり合いスパークする。
そこにイベントやプロモーションという、我々のできることがひとつとしてある。
森:そこはオンラインでもリアルでも、変わらない気がするね。
石渡:それが、ひとつの出来事であればね。
イベントの本質をもう一度考えて、整理した方がいいと思う。イベントという意味は変わっていくと思うけど、クライアントやパートナーの方々、そしてスタッフとタッグを組んで偶然の出会いを生んでいく、そのビジネスからは逸れたくない。素晴らしい偶然を作り出すプロでありたい。
真栄城:そうですね。こうやって短時間でも、共有できるといいですね!
最後に、社長が長く関わられている理容・美容界の今後について、いま構想を練っていることがあると伺っています。
石渡:ここはまた社会学的なことを考えていて。
美しさや「~らしさ」の基準が、時代の変化とともに変わってきている。その捉え方、その研究を始めています。
まだ言えませんが、新しいファッション、ヘアスタイルにトライしたい人の思いとスタイリストやサロンとつなぐ仕組みを考えています。
ひとつの街や駅前を見渡せば美容院がひしめいている。
そこに集まってくる情報は膨大です。
そこから美容院自体がつかむもの、発信できること、その動きの本質をつかみながら動いていくつもりです。
真栄城:まさにこれまでの積み重ねと、その上に新しい偶然を仕掛けていく役割ですね。
本年もよろしくお願いします。
(2021.01.05 ルーデンス社内にて)